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未完の遠野紀行−1991[その5]
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 これは、1991年春に遠野方面を旅した際の出来事を帰着後記録したものである。幾分10年近く前の記録なので、現在の様子と異なることや、文章に多少のミスがある部分については加筆訂正、もしくは付記にて補足を加えた。

5・遠野を巡る
〜YHの朝〜

 7時半起床。このYHでは前日に希望すれば、7時から11時まで朝食の時間を決めることができるという。ある人が7時に起きると言えば全員7時に起きて朝食を食べることとなる。
 洗顔をしようと洗面所へ行く。今までのような、ステンレスの流し台に蛇口が3つ付いているタイプではない。クリーム色の陶器の洗面台が2つ付いている。いずれも蛇口はレバータイプの自動水栓で温度が自由に調節できるようになっている。そのうちの1台は洗髪ができるように、シャワーが取り付けられているいる。鏡も各台にあり、口をすすぐコップまである。

 朝食はトーストとサラダ、そして卵料理とスープ。ホテルの朝食とほとんど変わらない。トーストに苺ジャムを塗って食べる。紅茶をすすりながら、水田の向こうに見える外の山々を見る。窓についた朝露がフィルターとなって山々が見える。季節は春といっても、遠野はまだ冬だ。

 食後、朝風呂を試してみる。改装されて以来、給湯装置も改装したので朝風呂に入れるようになった。昨日の夜は混んでいため入浴していなかったのだ。昨日の説明で明け方から9時まで入れるというので食後、手拭いと着替えを持って浴室の扉を開ける。

 中は青色のカラータイルが床と壁に敷き詰められ、屋根は傾斜のついたサンルーフ。浴槽は長目で、循環されたお湯が泡の水流になって勢いよく出ている。夜は星空を見ながら、そして朝は日の出を見ながらお風呂とは、なんとも贅沢な空間だ。久しぶりに浴槽で足を延ばしてみる。「あぁ、心地いい」と思わずことばが漏れる。

 サニタリー関連を語ったついでにトイレについても書いてみたい。これは男性トイレの話だが、扉に『Shower Type』と英語で書かれている。扉を開けると、INAXのシャワートイレ。最近では洗浄タイプのトイレが一般家庭にも普及している時代で、それ程驚かないかもしれないが、シャワータイプのトイレが設置されているYHは数える程しかない。もう一つ、便座にそのまま坐るのが抵抗のある人向けに紙製の便座シートまで付いている。商品名は『レストシート』。そのシートの箱には『見えない心理をかたちに』というキャッチコピーが書いてあった。
 ちなみに、改装前は汲み取り式(いわゆるボットン便所)と朝顔型の便器であった。ずいぶんと変わったものだと便座に座りながら想う。

〜自転車で巡る町〜

 いつになく豪華な朝を過ごし、さて、これから遠野の町へ出掛けることとする。YHでは自転車が借りられる。遠野ではバスの便も悪く、歩いて見てまわるには距離がある。車を借りればかなり回れるが、いかんせん免許がない。そこで唯一使える手段が自転車。一日800円(当時)。駅前などで借りるより多少安くなっているという。改装の時に自転車も新車を導入したそうだ。以前借りたとき、道の真中でパンクに遭ってしまったが、今回はその心配はなさそうだ。試走してみるとスーッと走ってくれる。

 去年買った、『エスコートブック・遠野』(遠野市観光協会編)の巻末の地図を見ながら、自転車を滑らせていく。早池峰古道跡の朽ちた鳥居、伝承園を過ぎ、国道340号線を走っていく。春先とはいえやはり寒い。が、緩やかだが長い坂道にさしかかりペダルに重みが掛かると一変して身体が熱くなってくる。小烏瀬川(こがらせがわ)の流れを左手に引き続きペダルを漕いでいく。
 和野という集落で国道と別れ、また坂道を走ると、JRバスの岩手山口バス停を見る。ここから先は大型のクルマは通れないような細い道である。

 バス停そばの2差路で私は間違った所へ行ってしまった。今までよりもさらに急坂になった。川の名前も和野川になる。左には山が迫ってくる。左カーブに曲がる寸前で間違いに気付く。貞任(さだとう)方面に来てしまったのだ。もう少し走らせるとミズバショウの自生地のある貞任高原があるのだが、まだミズバショウのシーズンではないので急いで引き返す。行きの坂道が急なので帰りが非常に楽である。ペダルをひと押ししてやると、自然に走り出す。勢いがついて非常に速い。行きの坂で汗をかいてしまったが、その汗は風を受けて気持ちのいいものになるのを感じた。

〜水車〜

山口集落の水車  行きの半分の時間で岩手山口のバス停に戻る。今度は間違えるまい。左にハンドルを切る。この通りは見るものが多い。左側に鳥居が見え、その下をくぐり、小道を進むと、ここにはダンノハナがある。

 ダンノハナは昔の囚人の処刑場だったという近寄りがたい場所だそうで、現在では墓地になっている。舗装道路に戻ると右手に『佐々木喜善の生家』がある。『遠野物語』は、この喜善から聞いた話を柳田國男が編集したという。その生家がここにあるのだ。建物は南部曲がり家の形態だが、現在も佐々木家のご家族が住んでいるので、屋根はスレート葺きに近代化されている。

 さらに先に進むと、現在ほとんどの地方で姿を消してしまった水車がここにはあった。しかも観光目的で保存されているだけではなく、現役で動いており、小屋の中で粉を搗いたりするのだという。自転車から降り、水車に近づく。水流に押されて勢い良く回っている。その音はまるで蒸気機関車がガッシャンボッボッと走っていく音に似ている。水車小屋の裏側も覗いてみる。小屋の中ではボコンボコンと何かを打ちつつける音がする。水車の力を利用して、粉を搗くのである。水車を離れても、水が回る音と粉搗きの音が耳に響き続けた。


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