STIJ Project Logo -
-
- STIJ News 現代飲料考 月刊 看板
巷の風景 My Trip私の旅 STIJ Projectについて 近隣諸網
トップページへ 現代風景研究会のBlogへ -
未完の遠野紀行−1991[その4]
  関連ページ
Diary of Trip
Webでする旅
SMILin' the Trip

 これは、1991年春に遠野方面を旅した際の出来事を帰着後記録したものである。幾分10年近く前の記録なので、現在の様子と異なることや、文章に多少のミスがある部分については加筆訂正、もしくは付記にて補足を加えた。

4・遠野YHの夜 その1
〜豪華な夕食と語らい〜

遠野YH全景(1990年撮影)  先ほどの青年と外国人のおかげで、なんとか迷わずにYHへ行くことができた。相変わらずYHまでの道は暗く、街燈もカサがついた何ともレトロな白熱灯。普段の蛍光灯の明るさに慣れてしまうとこの白熱灯が異常に暗く感じる。

 「とんでもないところに来ちゃったなァ」と横浜から来たという青年。確かに都会からこのような所に来てしまっては「とんでもない」と思うのもわかる。
 やっと、先にポツンと小さな明かりを見た。あれが今日泊まるYHだ。
 今までの『闇』による怖さが一気に吹っ切れた。

 遠野YHは平成2年の秋、改装工事を終えた。私は改装工事の前に行ったので一度、変わった姿を見たかった。
 チェックインを済ませ、寝室を見る。いつもの2段ベッドであまり変わっていない。
『天狗』いう部屋は2人部屋。今日はこの部屋に4人くらい泊まっているらしく、荷物がベッドに置いてあった。YHには他に『河童』や『雪女』などと言う部屋があり、いずれも男女別。男性と女性の部屋の間は斜め型の格子で仕切られている。

 さて、きょうはどんな人たちが泊まっているか。漫画部屋という漫画が部屋中ズラッと並んでいる部屋に行ってみた。
「今晩は」
「どこからいらっしゃったのですか?」
これはYHの話し掛ける時に使う言葉である。
「名古屋からです」
「どの様に来られたのですか?」
列車、バス、バイク、クルマ、自転車、飛行機、船。色々な手段で来るのでこの言葉も良く使う。これによって『ライダー』、『鉄っちゃん』だかよくわかる。
「列車です、上野から急行で」
「ホーッ、私は新宿から夜行で」
その名古屋から来た方は『時刻表』を持っていたので、地図で行程を見せた。

 もう一人、漫画を読んでいる方がいた。見た目から30歳位の男性である。
 北海道から来たという。本籍はまた別の所なのだが、北海道が好きで、あるYHに住民票を移したという。遠野へは3泊目だそうだ。

 色々話しているうち、夕食の時間となるが、これがまたすごい。
 食事は洋食で白ワインがついていた。YHの規則では飲酒や酒気帯びて入ることは禁止されているのだが(筆者注:当時)、あえて酒類を出すとはこれもすごい。
 白熱灯の温かみのある照明の下、ワインを飲みながら食事を戴く。ちょっとした高級レストランのディナーの雰囲気だ。料理もなかなか美味しい。YHよりはペンションという感じだが、また何か違うようにも思う。右や前の人と食べながら「何処どこはいいですよ」と情報を交換するのもYHならではである。

 もう一つ、今までのYHと違うのは食器を洗わなくてもいいことだ。その代わり、ここで働くヘルパーさんが忙しそうであったが…。洗わない代わり、食器はまとめて台所へ持っていく。
 食後、先程の北海道のホステラー(YHの宿泊者をそう言う)と雑談を続ける。
「列車で来たんですが…夜行で眠れなくて…今日はボーッとしてましたよ。車内に鉄ちゃん(主に鉄道ファンのこと)がいっぱいいて…」

 北海道のホステラーがこの前見た、鉄ちゃんについての話を聞くとしよう。
「北海道のローカル線に走っている、ちょっと列車には詳しくないのですが、キハ22形という種類のディーゼルカーがあって、それに乗っていたら…鉄ちゃんがいたんですよ。
 …で、色々話しているのを聞いたんだけど専門用語がポンポン出てきた挙げ句、『エンジンはどうなってるんかね』などと言いながら床にある点検用のフタをおもむろに開けたんですよ。この鉄ちゃんはスゴイ、と思いましたね」

私はア然として声が出なかった。
「あと自分でダイヤグラムを方眼紙に書いている人もいましたね」
私も鉄道趣味に片足を突っ込んでいる部類に入るが、さすがにエンジンの点検蓋を、しかも運転中の列車で開けようとは思わない。

 21時になるとティータイムになる。紅茶とお菓子を食べながら話が弾む。その前にペアレント(以下Pさんと呼ぶ)さんからの注意がある。談話室と漫画部屋はずっといても構わない。夜中の2時になろうが4時になろうが…。但し、寝るときはヒーターと明かりを消す、ということ、23時までは歌っても踊っても構わないが、23時になったら消灯になるのであまりうるさくならないように、とのことである。とても自由なYHだ。

 注意が終わると観光案内が始まる。ボードに手書きの地図と写真が貼ってあるのを見せて説明する。おもしろおかしく紹介するのでホステラーからは笑い声が出る。また、ガイドブックには載っていない、穴場なども紹介するので他の人と話している暇などない。これを聞くとどんなに遠いところでも「ちょっと自転車走らせて行ってみるか…」となる。一度実際にYHへ行って聞いてみてほしいと思う。

 観光案内後、同宿していたホステラーと雑談。先程の横浜の青年は何と高校の先生。文化部の活動で遠野へ来たという。3人の生徒を引率している先生も何となくまだ学生、という感じがする。聞いてみれば、去年大学を卒業して、その年の春から教育現場に勤めているそうだ。

 時計を見ると0時。そろそろ寝ますので…と談話室にいる人に言う。寝室の『天狗』に向かう。ベッドメイクはもう済ませたのであとは寝るだけだ。布団にもぐると…うーん、掛け布団が軽い。けれども暖かい。羽毛布団を使っているのである。
 夜行泊と乗り継ぎでさすがに疲れた。ゆっくり休んで明日は市内を巡るとしたい。


戻る 目次 次へ

コンテンツ内の音声、およびSMILをご覧になる際はRealPlayerが必要です。

ダウンロードはこちらへ→

このコンテンツの著作権は、STIJ Projectに帰属します。記載内容の部分利用は必ず本人の許可の上、お願いいたします。


dummy

[STIJ News] [月刊看板] [現代飲料考] [巷の風景] [My Trip]
[Stij Projectについて] [近隣諸網] [Blog] [to Toppage]
当サイト掲載の文書・画像・音声等の無断転載を禁じます。
dummy
dummy