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 巷で見られるさまざまな看板をご紹介する「月刊看板」の原点。
 久しぶりの復活です。

もくじ
●今月の看板●
2005.10

落ちたら助からない〜宮城県鳴子の水力発電所にて〜

東鳴子にて

救いようがないという状況はさまざまな場面に存在するが、これが生命に関わる問題になると事態は切迫感を増す。

 この看板は宮城県大崎市で撮影されたもの。ごらんのとおり背景には水力発電所の貯水池があり、この左側にはダムが存在する。
 大なり小なりダムというものは恐怖心を覚えるオブジェで、自然に恵まれた風景の中にコンクリートむき出しの物体が居座っているだけでもただならないのに、さらにコンクリートむき出しの物体が織りなす絶壁を眺めているだけでそこへ吸い込まれてしまいそうな感覚に襲われる。

 旅先。穏やかな陽射しの下で新鮮な空気を吸いながら散歩しているとき、突然として看板が目に飛び込む。「危い!! 落ちたら助からない」、のどかな風景に一瞬の緊張が走る。
 この看板を見たときの心象風景を再現するならば以下のようになるだろうか。

東鳴子にて

看板のデータ

宮城県大崎市鳴子温泉 2006年9月

2005.07

声に出して読みたい看板 成田名産 米屋の栗やうかん

やうかん

 唐突だが、上の看板の文字を読んでみよう。
 「やうかん
 なんとも美しい響きだ。
 みずみずしい黒々とした輝きと、弾力を帯びた四角い物体が脳裡に浮かんでくる。

 夏の昼下がり、氷水で冷やした水うかんの切れ端を口中にそっと含むと、ほのかな甘味とアズキの香りに一瞬だけ暑さを忘れる。水分の少ない練りうかんは、時間が経つと砂糖の成分が浮き出てきて次第に角が白く固くなってくる。それを包丁で切るとまるで薄氷の上を歩いたかのようなきれいな亀裂を生じる。

 見ても楽しい、食べても楽しい。うかんを改めて眺めてみるとなかなか面白いお菓子だ。

成田名物米屋の栗やうかん

 この看板は千葉県成田市で撮影されたもの。店先にアズキの袋が見えることから乾物店ではないかと考えられるが、詳細は不明。
 ちなみに米屋総本店は成田山新勝寺の参道に店を構える和菓子店である。栗むしようかんが名物で、参拝土産に買っていく人も多い。本店にはようかんの歴史や資料を集めた「ようかん専門の資料館」まで併設されている。

 古代中国で食された羊肉の汁物に似せたことからその名前がつけられた「ようかん(羊羹)」。旧仮名遣いで表記すればこの看板のとおり「やうかん」となる。
 画像では少し見にくいが、背後に「栗羊羹」と書かれた看板を確認することができる。

 しかし、「羊羹」よりも「ようかん」、「ようかん」よりも「やうかん」の方がお菓子のイメージがリアルに伝わってくる。
 文字の表記が導き出す語感とイメージはとてもデリケートなものだ。

看板のデータ

千葉県成田市 2000年1月
材質:ホーロー引き鉄板
(画像提供)

関連サイト

なごみの米屋ホームページ
成田羊羹資料館

2004.04

ザ・R指定 蕨駅東口自転車駐車場

R指定駐車場-1

 ポルノチックな表現や暴力表現の多い映画やビデオソフトで見かける「R指定」。とある駅前では真昼間からこの文字を見ることができる。場所はJR京浜東北線の蕨(わらび)駅。

 ここで「R指定」の「R」とは何だろうかということで、英和辞典を調べてみると、次の意味が掲載されている。

 restrict 【動詞】 制限する、限定する
 restricted 【形容詞】 限られた、制限された、狭い

R指定駐車場-2

 2枚目の画像に車イスマークの看板が見られるが、ここには「R登録者 駐車場」と表示してある。
 自転車の利用者が多く、市の公用車が自転車という蕨市では駅周辺に自転車駐車場が数箇所設置されている。利用する場合は年1回市役所に登録をしなければならないが、場所によって駅から徒歩30秒〜5分と利便性が異なるため、駅に限りなく近い駐車場所を確保することは非常に困難だ。毎年高倍率の抽選が行われているという。

 しかし、高齢者や身体の自由に困難のある利用者については、福祉事業の一環として優先的に登録できるようになっている。この場所は駅敷地までわずか10歩。この超一等地ゆえに未登録者が駐車場監視人の目を盗んで自転車を置いていくことが多いために、設置されたのが例の「R指定駐車場看板」である。

 ”Restricted”には「狭い」という意味もあるが、市の面積が5.10平方キロ、人口密度が1平方キロ当たり1万3千人という「狭い」街ゆえの看板ともいえる。

看板のデータ

埼玉県蕨市塚越 2004年1月
材質:枠部分アルミ・表示部分樹脂

2004.02

屋号の連鎖と連想 大宮駅東口の商店案内板

商店案内板1

 駅前でよく見かける地図式の商店案内板。地図としての役割を持ちながら、商店の広告として機能する広告看板の一種だ。広告会社がそれぞれのお店にスポンサーとなってもらい、広告料を多く払ったお店には店舗名や企業名を目立つ場所に大きく表示してくれる。
 相撲の番付のようなものだ。

 埼玉の交通の要衝、大宮駅にもこの看板はあった。場所は東口バス乗り場の近く。
 手書きの力強い書体と、漢数字の電話番号表記に懐かしさを感じつつも、現在もなお古くからのスタイルが継承されている。こうした看板を見つづけていると、職人の技と心意気が伝わってくる。

 しばらく凝視していると、ちょっと変わった屋号があることに気づいた。
拡大したものはこちら。

商店案内板2

 「大宮高島屋郵便

 世間では「パン屋さん」とか「新聞屋さん」など親しみを込める意味合いで屋号に「〜さん」とつけて呼ぶことがある。一方、「あのラーメン屋の親父め」とか「これが印刷屋の悲しい性よ」などと屋号を呼び捨てにした場合、その店に対する貶し、あるいは自ら就く職業に対する卑下のニュアンスを持ち、印象が大きく変わってくる。

 おそらく看板の制作中、「高島屋」の文字に釣られて「郵便局」を「郵便屋」と書いてしまったのかもしれない。けれどここにはさきに触れたような貶しや卑下の意味合いはまったくなく、むしろ「老舗デパートのテナントにはやっぱり屋号だ」という「思い切りのよさ」を感じてしまうのだ。
 またうがった見方をすれば、現在高島屋が建っている場所にはかつて大宮郵便局があり、看板を制作した職人はその過去を知っていて意図的に書いたのではないかとさえ思える。

 藍染めに白地の〒マークがプリントされた前かけをつけて「へい、簡易書留いっぽん」とか、「新商品のエクスパック500はどうでっしゃろ?」と肩を縮めて揉み手する局員が窓口にいそうな、そんな空想を抱かせてくれる看板だ。
 というわけで、ついでにこんなロゴもつくってみた。

看板のデータ

埼玉県さいたま市大宮区錦町 2004年1月
材質:トタン板

2003.11

わかってはいるんだけど…  中華料理店「万華」の看板

万華(まんげ)

 今年の夏、とある中華料理店が改装とともに看板も架け替えられた。
 看板架け替え作業を目にした私は、いったいどんなデザインになっているのかと興味を持ち、翌日同じ場所に足を向けた。

 そこで見たものは、「万華」とWindowsの標準書体についてくるようなポップ書体で大きく書かれたロゴタイプだった。ご丁寧にも「マンゲ」とルビまで振ってある。

 中国では縁起のいい名前だということはわかっている。わかっているのだけれども、ルビに目が行くとよからぬものを連想してしまう。

 それにしても、緑色のバックに赤色の文字は配色的に多少難があるように思える。

看板のデータ

埼玉県川口市芝新町 2003年11月
※電話番号の部分を修正しています。

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